■賃貸マンション〜計画方針

賃貸マンションを【いいマンション】にしていくためには、【住まい手に満足してもらうこと】が重要です。
礼・敷金をしっかり徴収して回転率を上げるという考え方もありますが、景気低迷が続く昨今、
・高額な礼・敷金を賃貸条件にしにくい
・退去後すぐに入居者が決まらなければ、
 ⇒ 収入期間に空きが生じる
 ⇒ 家賃設定を下げなければ、周辺との競争の中で決まらない
という動向が顕著であり、長く住んで頂いた方が安定した収益を確保できるからです。
デザイン自体も、必ずしも大幅な家賃増にはつながらなくなりつつあります。ですが、
・「他と何か違う!」という特徴があれば入居が決まりやすい
・気に入られると、長く住み続けていただける
というメリットがあります。収支計画が崩れにくいのです。
賃借面積・工事・メンテナンスのコストバランスを図り、わかりやすい特徴をもつ建物とすることが収支計画の保全に繋がると考えます。

また、質の良い住環境には、そういう雰囲気を求める方が住まわれます。気に入って住まれる方は、そこでの生活を大事にしてくれます。
結果、住まい方の質も自然に高まり、建物のメンテナンスにかける手間や日常のちょっとした問題が減るということもマンションのオーナーにとっては少なくないメリットになることでしょう。



 ■計画の進め方





  1.収支計画を作る


敷地にどのくらいのヴォリュームで建物が建つか、賃貸部分としてどの程度の面積が確保できるか、どのような住戸を何戸作り、その場合の工事費をどう想定するか。そして、いくらで貸して何年で回収できるか。
これらをすべて最初の段階で【収支計画】として策定します。


 
  2.体制


計画の策定には、企画・コンサルティングなどの専門の会社と協力体制を作って業務に当たるようにしています。
賃貸マンションの場合、建てられる地域や周辺環境によって建築計画を柔軟に対応する必要があること、また 「設計事務所だけでは建物デザインに終始して他は知らぬ存ぜぬになるのではないか」ということのないよう、地域や建物に対する客観的な評価を計画当初から取り入れていくことが大事だと考えるからです。
また企画会社には条件を読み解くにとどまらず、竣工後に家賃の回収を行うとしたらという視点で具体的に提言してもらいます。
サブリース(一括借上方式)等についても御提案することが可能です。

  3.プランニング


収支計画を元にプランニングを行います。
敷地全体を有効に使い、エントランスから住戸に至る共用空間も雰囲気作りのために重要視します。
住戸は間取りだけでなく、なるべく広く、気持ちよく感じるように平面とともに断面を計画します。例えば、天井高を高めに取ることで居室の広がりを作りつつ、床下収納やロフトの設置を可能にし機能性をワンランク上に感じてもらうなどの工夫をしていきます。

構造は、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造、それぞれ適性に応じて計画します。



 

  4.天空率


道路斜線制限がかかる場合、ある高さを超えると上の方を斜めに削ったような建物や階段状にセットバックした不整形な建物になります。
町中がそのような建物ばかりになることは好ましいことではありません。そういう状況を緩和するために策定された手法が【天空率】です。
簡単に言えば、道路斜線内に建てられる建物と同等以上に空が見えるように計画すれば道路斜線は気にしなくてよい、ということです。
隣地との間を空ける=空が見えるようにスレンダーな建物にしていくと、上層まで整形な建物とすることができるわけです。
住戸、階段・エレベーターの位置が斜線に影響されないため、プラン上また施工上の効率を上げられると同時に、すっきりした端正な建物とすることが可能になります。




 

 ■長期的な視点



これから激増する築40年以上のマンションのストックをどうするか、社会問題として顕在化しつつあります。すべてを建て直すことは不可能であり、行政による耐震やリニューアルに対する優遇措置が強化されることが予想されます。
改修された建物はきれいになり、住みやすくはなりますが、構造体の制約等により新築同様の機能性、快適さを確保することは難しいため、事業計画自体は低価格で貸すことを前提にすることが多くなるでしょう。
この大量のリフォームマンションは、低コスト低家賃を主眼として現在建てられている狭小マンションと同じ土俵に乗ることになります。長い目で見たとき、これらと一線を画しておくことが建物の健全な維持のためにはより重要になっていくと考えられます。