空 間
  時折、とても強く印象に残る建築に出会います。
そういう建築は、形や色だけではなく「空間そのもの」が訴えかける力をもっています。
得も言われぬ居心地の良さであったり、スケール感による時もありますし、光の美しさや場の静謐さに圧倒されるときもあります。
街並みとの調和に目を見張ることもあります。
そして、これらの空間は必ず人を包み込み、一体のものとして存在しています。
全体が相俟って何とも言えない居心地の良さを創り出しています。
私も空間で何かを伝えられる建築を創り続けたいと思います。
そして、その建築に関わる人や町に何らかの貢献ができればとてもうれしく思います。

 変わらないもの
  建築は、時間を経ても【変わらないもの】と時間と共に【変わっていくもの】で作られています。
変わらないのは、例えばイメージ、構造強度、採光・通風など、建築を支える最も重要な部分と言えます。
一方変わっていく部分は、例えば給排水や冷暖房設備、収納、外装などその時の家族の様子や社会的な背景、経年劣化により変化していく部分です。 建築によっては、平面もこれにあたります。
人の生活に直接関与するところ、住みやすさを左右する部分であり、初めから将来的な対応のしやすさを考えておかなければなりません。
変わらないものと変わっていくものは建物ごとに異なるため、必要とされているものを見極めて、建物の芯となる空間とともに、長く使い続けることができる合理性を追求することが必要です。

 シンプルであること
  建物を建てようとするとき、「このような建物にしたい」というイメージをお持ちかと思いますが、はっきりしている場合もあれば、何となくもやっと判然としないときもあるのではないでしょうか。
設計の中で「どのように住みたいか」「どのように作りたいか」、この思いをはっきり表していくことが建物としての強さ、引いては生活空間の満足感を生むことに繋がります。
ただ、求められるものは建物ごとに異なり、その数も1つということはありません。
その中には相反するものもあります。 例えば、「部屋を広くしたい」と「収納を多くとりたい」どちらを優先するか、というようなものです。
建築を作る過程は、すべてこの答を出すための時間と言っても差し支えないくらいです。
設計者は、「何が大事か」を常に発注者とともに考え続けます。
余計なものを削ぎ落とし、大事なものだけでできている空間にしていく、そういう意味でのシンプルさが建築には必要だと考えます。